1.2 司法試験・予備試験

【解説】司法試験合格者が公認会計士を目指すメリットは?方法は?

重要度:★★★☆☆

こんばんうかるー!
妻が退院しました。いやー長男かわいい。名前も決まりました!

ダブルライセンスあるある相談


さて今日は、ダブルライセンスあるある相談パート2です。

パート1は公認会計士試験合格後に司法試験を受験する際の方法、メリット、年収などの相談でした。公認会計士→弁護士、という質問です。
その際の記事はこちら↓

【完全解説】公認会計士から弁護士を目指す方法は?メリットは?収入は? 重要度:★★★☆☆ こんばんうかるー! 我が子が生まれて3日目。いやぁ本当にかわいい。基本は子供嫌いな自分ですが、我が子...

今日はその逆、弁護士→公認会計士、というルートについて解説していきます。具体的には、

「司法試験合格後に公認会計士試験を目指したいと考えています。方法やメリットなどを教えてください。」

これは私が通ったルート(公認会計士から司法試験)とは逆ですので、私の実体験として語れるわけではないのですが、ある程度の解説はできるかなと思っています。

司法試験合格後に公認会計士を取るメリット


まず最初に、司法試験合格後(基本的に弁護士を想定)に公認会計士を取得するメリットを紹介しましょう。

①弁護士業務の幅が広がる

まず、弁護士業務の幅が広がるのは間違いありません。
私はまだ弁護士実務に出てから2年半くらいのペーペーですが、やはり他の弁護士よりも守備範囲が広いとは実感します。例えば、以下の業務は会計士を持っていると親和性が高い業務だと体感しています。

  • 破産、事業再生
  • 税務訴訟
  • 事業承継
  • DD(デューデリジェンス)
  • ファイナンス
  • 訴訟の損害論の部分
  • 第三者委員会
  • 社外役員
  • その他企業法務全般

ここらへんの業務って、なかなか専門的な知識もでてきますのであまり手を出しにくい分野かなと思います。
でも会計士を持っていると、拒絶反応はなくなります。むしろワクワクする分野になります。

②弁護士業務に深みが出る

また、弁護士業務に深みが出ます。
通常の弁護士業務でも、数字というのは絶対に絡んできますよね。企業法務なら財務諸表を読めなきゃダメですし、訴訟の損害論のところでも数字は出てきます。

世の中の弁護士は数字アレルギーが強い先生が多いので、会計士を持っているだけでそれだけで通常業務にも深みがでる印象です。

司法試験合格後、いつ公認会計士試験を受けるべきか?


さて司法試験合格後に会計士まで持つといろいろなメリットがあることが分かったかと思います。
では、いつ目指すのがベストでしょうか?

受験生時代に目指し始める?

まず、まだ司法試験受験生の状態で、司法試験合格後に公認会計士試験を受けたいという方も結構います。
これは会計士試験→司法試験、と同じなのですが、回答は「司法試験に合格してから考えろ」です。

まず目の前の司法試験に集中してください。会計士試験に興味出てくるのはわかるけど、二兎を追う者は一兎をも得ず、です。

少なくとも、司法試験の本番が終わるまでは会計士試験については忘れてください。

司法修習中に会計士試験を目指すのはどうか?

司法試験合格後、司法修習中に会計士試験を目指す方も結構います。

結論としては「アリだけどオススメしない」です。

理由は以下です。

①会計士試験は甘くない

まず、会計士試験は司法試験受験生が思っているほど甘くありません。私の中では、試験の難易度(合格のしやすさ)を敢えて点数化するならば、予備試験は100、会計士試験は90、司法試験は85です。
つまり、ぶっちゃけ司法試験より会計士試験の方が難しい感覚です。
ただ、それは全科目受けるときの話で、科目免除を考えるとそこまでではないのですが、それでも難しい試験であることは間違いありません。

②司法修習は忙しい、楽しい

司法修習は想像よりは忙しいです。月金9時17時で拘束されますし、模擬裁やら課題やら起案やら飲み会やらで結構忙しいです。
そして、司法修習は楽しいです。司法試験合格者たちと絡む、社会に出るまでのモラトリアムみたいな期間でもあります。
なので、想像している以上に会計士試験の勉強に打ち込めないと思っといた方がいいです。

せっかくの司法修習期間、法律について考え、いろいろな実務家に何にも恥ずかしげなく質問できる、そんな恵まれた環境は今後一生訪れません。そんななか会計士試験の勉強を続けるのは難しいです。

③会計士試験は8月

会計士試験の論文は例年8月にあります(今年は新型コロナの関係で11月上旬に延期されてます)。
司法修習が12月に始まるとして、8月が会計士試験です。つまり、司法修習に入ってから論文式試験まで8,9ヶ月しかありません。
たった8,9ヶ月です。会計士試験専業受験生でも、1.5年〜2年で合格すれば超短期と言われる試験です。科目免除を考えても本当に死ぬ気でやらないと難しい試験だということが期間からしてもわかります。

④受かった人を見たことない

最後に、私の周りには司法修習中に会計士試験を目指し始めた人が沢山いますし、色々相談に乗って来ましたが、実は未だかつて司法修習中に会計士試験に受かった人を見たことがありません。
司法試験中に合格してる人もいるとは思いますが私の周りはゼロです。
この結果からも、かなり厳しいことがわかるかなと思います。

以上から、司法収集中の会計士試験受験は「アリだけどお勧めしない」という結論になります。

実務にでたら目指す

弁護士実務に出てから会計士試験を目指す、これは「大いにアリ」です。
弁護士実務にでると、会計の重要さがわかるはずです。会社が依頼者になる場合は財務諸表が読めなきゃ話になりませんし、何をするにしても「数字アレルギー」は絶対避けた方がいいです。

弁護士実務は忙しいですが、働きながらコツコツと勉強を進めるのは非常に素晴らしいことです。会計に興味が出てきたら、その時点で是非会計士を目指しましょう。

オオスメの目指し方

以上から、オススメの目指し方は、司法修習中は簿記2級くらいまで取っておき、実務に出てから会計士試験を1〜2年かけて取る、というのがお勧めです。
これであれば、司法修習も楽しみつつ、弁護士実務についたときは簿記2級くらいのレベルはあるので財務諸表はある程度読め、本当に目指したくなったら時間を自分なりにコントロールしながら会計士試験の勉強ができます。

会計士試験の科目免除は非常に大きい


司法試験合格者は、ものすごい会計士試験の科目免除があります(逆はないのに…!)。

具体的には以下です。

    【短答】

  • 財務会計論→免除!
  • 管理会計論→免除!
  • 監査論→免除!
  • 企業法→免除!
  •  ⇒つまり短答自体が免除!!
    【論文】

  • 会計学→免除なし
  • 監査論→免除なし
  • 企業法→免除!
  • 租税法→免除なし
  • 選択科目(民法選択)→免除!

どうでしょう?めちゃくちゃ免除がありますよね。このような大幅な科目免除があることを私は(半ば揶揄して)「簿記一級に毛が生えたもの」と表現しています。

ちなみにちょっとわかりにくいのですが、

  • 簿記+財務諸表論=財務会計論
  • 財務会計論+管理会計論=会計学
  • 会計学≒簿記1級

みたいな関係にあります。「会計学」とまとめられていますが、実質は3科目分の重さがあり、それぞれ予備校では別科目として勉強していきます。

会計士試験に受かっても会計士ではない


なお、公認会計士試験に合格するだけでは公認会計士を名乗ることができないので注意が必要です。
公認会計士の登録要件、つまり「公認会計士」と名刺に書くためには、以下の三つの要件を満たす必要があります。

  1. 公認会計士試験合格
  2. 実務経験(2年)
  3. 実務補修所の卒業(原則3年)

弁護士から公認会計士を名乗る場合、この②と③が結構大変です。

②実務経験

②実務経験については弁護士業務では要件を満たさないため、基本的には監査法人に勤務する必要があります。
これは、非常勤職員でもいいですが、フルタイムで法律事務所で働いていたら達成は無理です。
法律事務所の理解が必須条件になります。

③実務補修所

また、実務補修所が原則3年(短縮すると2年)あります。
これは、平日夜と土日に授業を受けるのが中心です。確か、1年目が一番授業が多く、週2~3くらい授業があったような記憶です(あまり定かではない)。

これら②③を経ないと公認会計士を名乗れないので、結構大変です。会計士試験を目指す以上、会計士試験合格のみでいいと割り切るか、どうせなら公認会計士を目指すか、しっかり計画的に考えておく必要があります。

司法試験合格者が公認会計士を目指すときの受験上の注意点


司法試験合格者が公認会計士を目指すとき、受験上の注意点もいくつかあります。

①過去問主義「ではない」

司法試験合格者が公認会計士試験を目指す場合、まず戦略として過去問を研究・回転しようと考えると思います。司法試験ではひたすら過去問をやれと指導されるので当然です。

でも実はこれ、会計士試験には通用しません。
会計士試験は過去問を解くことはほとんどなく、大多数の受験生が予備校の答練を回転させまくって本試験に挑みます
もちろん過去問研究は重要なのですが、大多数が答練なのですから、答練を回転するべき、という受験戦略になります。

②独学は無理

次に、司法試験合格者はまず独学でできないかと考えると思います。
しかし会計士試験において独学はまず無理だと思っていいいでしょう。
これは、司法試験は市販のテキストが充実しているため市販のテキストをうまく使えば独学も可能であるのに対し、会計士試験は市販のテキストが全然充実していないことが理由です。
少しお金はかかりますが、予備校に入るのが結局のところ近道です。

③司法試験合格者向けの予備校講座がある

じゃあ、どの予備校を使えばいいのかというと、それは好みです。
会計士試験予備校業界の大手と言えば、TAC、大原が昔からの大手で、最近では東京CPA会計学院が一気に実績を伸ばしている感じでしょうか。
その他にも、LEC、クレアールなども規模は小さめながらも短期合格者を輩出している予備校です。
HPや、予備校の資料請求などにより見て決めるといいでしょう。

でも実は、LECについては司法試験合格者向け公認会計士試験講座というのがあります。
科目免除を考慮したカリキュラムで、値段もかなり抑えられているのが特徴のようです。
他の予備校にはないコースなので、まずはこちらを検討してみてはいかがでしょうか。

LEC 司法試験合格者向け会計士試験講座
公式HPはこちら

おわりに


今日は、司法試験合格者が公認会計士試験を受験する際に考えるべきこと、知っておくべきことについて紹介しました。

正直なところ、一番言いたいのは「会計士試験を舐めちゃいけない」ということです。
生半可な考えで目指すとうまくいきませんので、是非計画的に目指しましょう。

jijiキュラ
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