1.2 司法試験・予備試験

【会社法】1分で分かる分配可能額

はじめに

この記事は私のブログには珍しく、知識的な記事です。実はこちらの記事、私の前のブログ記事の中でぶっちぎりで人気第一位の記事でした。
この記事を読むと、まじで司法試験レベルの分配可能額の計算は絶対にできるようになります。それも1分で。

あるとき司法試験受験生に「平成23年の司法試験の商法の問題で分配可能額が出てくるけど、出し方がよくわからない」という質問を受けました。
そう、司法試験受験生にとって会社法はそもそもよくわからないのに、会計が絡む部分は尚更わかりません。
今日はこの問題について超わかりやすく、そして忘れない説明をして差し上げましょう。

平成23年の司法試験商法の問題

平成23年に司法試験商法で問われていた資料はこちらです。

さて司法試験受験生に質問です。この財務諸表から、分配可能額はいくらですか?条文を見てもいいので答えてみてください。ヒントは会社法446条1項、2項です。

答えは500百万円です。

正解できましたか?

正解できなかった方は、この記事を読めば「なにこの簡単な計算wワロスwww」となるのでご安心ください。

分配可能額のわかりづらさ

分配可能額の算定には、厳密には、会社法461条1項、2項、会社計算規則158条などを見る必要があります。
一応見ておきますか?本当に見ますか?長くて後悔しますよ?

☆会社法
(配当等の制限)
第四百六十一条 次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
一 第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り
二 第百五十六条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得(第百六十三条に規定する場合又は第百六十五条第一項に規定する場合における当該株式会社による株式の取得に限る。)
三 第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得
四 第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
五 第百七十六条第一項の規定による請求に基づく当該株式会社の株式の買取り
六 第百九十七条第三項の規定による当該株式会社の株式の買取り
七 第二百三十四条第四項(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による当該株式会社の株式の買取り
八 剰余金の配当
2 前項に規定する「分配可能額」とは、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号から第六号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(以下この節において同じ。)。
一 剰余金の額
二 臨時計算書類につき第四百四十一条第四項の承認(同項ただし書に規定する場合にあっては、同条第三項の承認)を受けた場合における次に掲げる額
イ 第四百四十一条第一項第二号の期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
ロ 第四百四十一条第一項第二号の期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
三 自己株式の帳簿価額
四 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
五 第二号に規定する場合における第四百四十一条第一項第二号の期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
六 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

☆会社計算規則
(その他減ずるべき額)
第百五十八条 法第四百六十一条第二項第六号に規定する法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額は、第一号から第八号までに掲げる額の合計額から第九号及び第十号に掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
一 最終事業年度(法第四百六十一条第二項第二号に規定する場合にあっては、法第四百四十一条第一項第二号の期間(当該期間が二以上ある場合にあっては、その末日が最も遅いもの)。以下この号、次号、第三号、第六号ハ、第八号イ及び第九号において同じ。)の末日(最終事業年度がない場合(法第四百六十一条第二項第二号に規定する場合を除く。)にあっては、成立の日。以下この号、次号、第三号、第六号ハ、第八号イ及び第九号において同じ。)におけるのれん等調整額(資産の部に計上したのれんの額を二で除して得た額及び繰延資産の部に計上した額の合計額をいう。以下この号及び第四号において同じ。)が次のイからハまでに掲げる場合に該当する場合における当該イからハまでに定める額
イ 当該のれん等調整額が資本等金額(最終事業年度の末日における資本金の額及び準備金の額の合計額をいう。以下この号において同じ。)以下である場合 零
ロ 当該のれん等調整額が資本等金額及び最終事業年度の末日におけるその他資本剰余金の額の合計額以下である場合(イに掲げる場合を除く。) 当該のれん等調整額から資本等金額を減じて得た額
ハ 当該のれん等調整額が資本等金額及び最終事業年度の末日におけるその他資本剰余金の額の合計額を超えている場合 次に掲げる場合の区分に応じ、次に定める額
(1) 最終事業年度の末日におけるのれんの額を二で除して得た額が資本等金額及び最終事業年度の末日におけるその他資本剰余金の額の合計額以下の場合 当該のれん等調整額から資本等金額を減じて得た額
(2) 最終事業年度の末日におけるのれんの額を二で除して得た額が資本等金額及び最終事業年度の末日におけるその他資本剰余金の額の合計額を超えている場合 最終事業年度の末日におけるその他資本剰余金の額及び繰延資産の部に計上した額の合計額
二 最終事業年度の末日における貸借対照表のその他有価証券評価差額金の項目に計上した額(当該額が零以上である場合にあっては、零)を零から減じて得た額
三 最終事業年度の末日における貸借対照表の土地再評価差額金の項目に計上した額(当該額が零以上である場合にあっては、零)を零から減じて得た額
四 株式会社が連結配当規制適用会社であるとき(第二条第三項第五十一号のある事業年度が最終事業年度である場合に限る。)は、イに掲げる額からロ及びハに掲げる額の合計額を減じて得た額(当該額が零未満である場合にあっては、零)
イ 最終事業年度の末日における貸借対照表の(1)から(3)までに掲げる額の合計額から(4)に掲げる額を減じて得た額
(1) 株主資本の額
(2) その他有価証券評価差額金の項目に計上した額(当該額が零以上である場合にあっては、零)
(3) 土地再評価差額金の項目に計上した額(当該額が零以上である場合にあっては、零)
(4) のれん等調整額(当該のれん等調整額が資本金の額、資本剰余金の額及び利益準備金の額の合計額を超えている場合にあっては、資本金の額、資本剰余金の額及び利益準備金の額の合計額)
ロ 最終事業年度の末日後に子会社から当該株式会社の株式を取得した場合における当該株式の取得直前の当該子会社における帳簿価額のうち、当該株式会社の当該子会社に対する持分に相当する額
ハ 最終事業年度の末日における連結貸借対照表の(1)から(3)までに掲げる額の合計額から(4)に掲げる額を減じて得た額
(1) 株主資本の額
(2) その他有価証券評価差額金の項目に計上した額(当該額が零以上である場合にあっては、零)
(3) 土地再評価差額金の項目に計上した額(当該額が零以上である場合にあっては、零)
(4) のれん等調整額(当該のれん等調整額が資本金の額及び資本剰余金の額の合計額を超えている場合にあっては、資本金の額及び資本剰余金の額の合計額)
五 最終事業年度の末日(最終事業年度がない場合にあっては、成立の日。第七号及び第十号において同じ。)後に二以上の臨時計算書類を作成した場合における最終の臨時計算書類以外の臨時計算書類に係る法第四百六十一条第二項第二号に掲げる額(同号ロに掲げる額のうち、吸収型再編受入行為及び特定募集(次の要件のいずれにも該当する場合におけるロの募集をいう。以下この条において同じ。)に際して処分する自己株式に係るものを除く。)から同項第五号に掲げる額を減じて得た額
イ 最終事業年度の末日後に法第百七十三条第一項の規定により当該株式会社の株式の取得(株式の取得に際して当該株式の株主に対してロの募集により当該株式会社が払込み又は給付を受けた財産のみを交付する場合における当該株式の取得に限る。)をすること。
ロ 法第二編第二章第八節の規定によりイの株式(当該株式の取得と同時に当該取得した株式の内容を変更する場合にあっては、当該変更後の内容の株式)の全部又は一部を引き受ける者の募集をすること。
ハ イの株式の取得に係る法第百七十一条第一項第三号の日とロの募集に係る法第百九十九条第一項第四号の期日が同一の日であること。
六 三百万円に相当する額から次に掲げる額の合計額を減じて得た額(当該額が零未満である場合にあっては、零)
イ 資本金の額及び準備金の額の合計額
ロ 新株予約権の額
ハ 最終事業年度の末日の貸借対照表の評価・換算差額等の各項目に計上した額(当該項目に計上した額が零未満である場合にあっては、零)の合計額
七 最終事業年度の末日後株式会社が吸収型再編受入行為又は特定募集に際して処分する自己株式に係る法第四百六十一条第二項第二号ロに掲げる額
八 次に掲げる額の合計額
イ 最終事業年度の末日後に第二十一条の規定により増加したその他資本剰余金の額
ロ 最終事業年度がない株式会社が成立の日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
九 最終事業年度の末日後に株式会社が当該株式会社の株式を取得した場合(法第百五十五条第十二号に掲げる場合以外の場合において、当該株式の取得と引換えに当該株式の株主に対して当該株式会社の株式を交付するときに限る。)における当該取得した株式の帳簿価額から次に掲げる額の合計額を減じて得た額
イ 当該取得に際して当該取得した株式の株主に交付する当該株式会社の株式以外の財産(社債等(自己社債及び自己新株予約権を除く。ロにおいて同じ。)を除く。)の帳簿価額
ロ 当該取得に際して当該取得した株式の株主に交付する当該株式会社の社債等に付すべき帳簿価額
十 最終事業年度の末日後に株式会社が吸収型再編受入行為又は特定募集に際して処分する自己株式に係る法第四百六十一条第二項第四号(最終事業年度がない場合にあっては、第八号)に掲げる額

いやまじ吐きそう。なんでこんなにわかりにくいんだろう。むしろ芸術の域です。
この条文を見て「うわぁ…」とアレルギーになっている人も多いと思います。

ただ、実は、細かいことは公認会計士試験でがっつり聞かれる範囲なので、司法試験上は一切不要です。

これだけ押さえろ

そこで、司法試験上押さえるべきものをお教えします。それは、

分配可能額=その他利益剰余金+その他資本剰余金-自己株式

これだけです。

これらを、貸借対照表からピックアップすれば、司法試験上まず間違いなく分配可能額が出せます。

なぜそうなるのか?

なぜ上記式だけでいいのか。気になる方もいると思うので以下では理由を簡単に説明しますが、気にならない方は上の式だけを覚えてください。これだけ覚えておけば、本番で困ることはありません。

ただ、司法試験で貸借対照表が添付されているときに場合に、「この項目って入れなくていいのかな…?」と迷わないためにも、今回は条文から理由を説明するのではなく、貸借対照表の項目別に理由を説明してみましょう。

分配可能額に考慮しない項目

まずは貸借対照表に載ってるけど、考慮しなくていい項目から。

<大原則>
配当は、会社が稼いだお金から行うのが大原則。
逆を言えば、株主との取引で生じたお金からは配当してはいけない。

これがよく言う、「会社債権者保護のため」の意味です。
この大原則は大事なので、これを念頭に、各科目を見ていきましょう。

①資本金

  • 内容

株式発行の払い込み金

  • 理由

株主との取引から生じたお金そのものだから配当はあかん

  • 補足

配当しちゃいけないものの典型です。資本金はもろに株主との取引から生じたお金のため分配しちゃいけません。

②資本準備金

  • 内容

株式発行の払い込み金

  • 理由

資本金と同じやから配当はあかん

  • 補足

え?資本金と同じ?と思うかもしれません。
ええ、同じだと思っていいです。

資本準備金は、株主からの払い込み金のうち、1/2を準備金にできるという会社法445条2項、3項に基づき計上されるものです。

なんでこんなことをするかというと、会社法や税法上、大会社に当たるか否かは「資本金」によって判断されますよね。そして、大会社に当たる場合、会計監査人を設置しなきゃならなくなったり、税金が増えたり、いろいろ面倒なことが起こります。

そこで、大会社にしたくないなら半分までは「資本金」には入れなくていいよ、という規定を作ったのです。会社のニーズに合わせた機関設計をできるように、ということです。

ここからわかるように、「資本金」も「資本準備金」も、同じく株主からの払い込み金額であり、単に表示区分が違うだけです。
なので、配当不可。それだけ。

③利益準備金

  • 内容

配当するときに配当額の1/10を積み立てたお金

  • 理由

債権者のために積み立てたのに、それを配当できたら無意味になるから配当はあかん

  • 補足

利益準備金は、配当額の1/10を積み立てなきゃならないという会社法445条4項の規定により積み立てた額です。

なんでそんな積み立てをするかって、それは会社が利益があるからって無限に配当できるとすると会社債権者がかわいそうだから。

なので、配当額の1/10は会社債権者のために取っておいてや、というのが、利益準備金。

例えば、1000万円配当したいなら、100万円を利益準備金に積み立てるので、実際配当する際には1,100万円が会社になきゃできないことになります。

このように、会社債権者のために折角取っておいたお金なのに、それを配当できるとするのは背理(循環?矛盾?)なので、配当はできません。

以上①資本金、②資本準備金、③利益準備金が、「分配可能額に考慮しない項目」です。

司法試験で与えられた貸借対照表にこれらの金額が載っていても、これらは無視!おkですね?

分配可能額に考慮する項目

では次に、最初に書いた式、

分配可能額=その他利益剰余金+その他資本剰余金-自己株式

に出てくる項目が、なぜ分配可能額で考慮されるのかを簡単にみていきましょう。

❶その他利益剰余金

  • 内容

会社が稼いだお金の累積

  • 理由

会社が稼いだ利益だから配当おk

  • 補足

これは大原則そのままです。会社が稼いだ利益は「その他利益剰余金」に累積されていきます。だから、そこから配当するのは全く問題なし。むしろウェルカム。

❷その他資本剰余金

  • 内容

株主との取引で生じたよくわからないお金

  • 理由

だって配当したいんだもぉぉぉぉん!

  • 補足

ふぁ?って思うと思います。
そうなんです。「その他資本剰余金」だけは、上記大原則が通用しないのです。

その他資本剰余金は、例えば、自己株式を1000万円で買った→会社に置いておいた→その自己株式を値上がりしたときに1500万円で売った、という場合に、その差額の500万円が計上されます。

これって、株主との取引から生じたものなので、大原則からすると配当できないはずなのです。実際、一昔前は配当できませんでした。

でも、今は配当できる。

理由は配当したいからwww

自分が会計士試験受験生の時、講師の方に以下のようなエピソードを聞きました。ただし、裏は取れてないので、参考までに。

(バブル崩壊期の銀行:さながら半沢直樹)
お偉いさんA「やっべー利益でねー」

お偉いさんB「うわーこのままじゃ配当できねー」

お偉いさんC「あーこのままじゃ株主に怒られるー」

お偉いさんD「ん?その他資本剰余金てのはいっぱいあるな。これ配当できへんの?」

下っ端「お偉いさん!それは法律上配当できないです!」

お偉いさんE「法律?知らねえよそんなん。じゃあ法律変えろや!うちは配当したいんじゃ!」

(政治家へ根回し)

国会「その他資本剰余金も配当OKとする。」

と、嘘か本当かわかりませんが、こんな感じで「その他資本剰余金」が分配可能額に含まれることになったのです。

実際、共同出資で子会社を設立した場合など、1年目は利益が出ないけど、その他資本剰余金がたくさんある場合があります。そんなときでも出資者に約束通り配当をしたいというニーズはあるようです。

長くなりましたが、「その他資本剰余金」が配当できるのは、実務上の必要性。こう押さえればおk。

❸自己株式

  • 内容

会社が持っている自己株式の額

  • 理由

既に配当した額だから引かなきゃあかん

  • 補足

自己株式の取得は、株主から株をもらい、お金を払うというものです。それはすなわち、新株発行の逆だと思えばイメージが涌きやすいと思います。

すでに株主に払い戻した(配当した)お金なんだから、それは分配可能額からは引きましょうね。というのが自己株式を分配可能額を控除するわけ。

例えば、1000万円のその他利益剰余金がある会社で、その時点で300万円の自己株式があるなら、もう300万円は配当してるんだから、配当できるのは残り700万円ですよね、ってこと。

なお、自己株式の額は平成23年の商法では問われていませんが、基礎中の基礎なので紹介しました。自己株式については司法試験でいつ問われても全然文句言えないレベルの基礎です。

もう一度過去問を解いてみよう

以上が分配可能額の算定方法です、わかりましたね?簡単ですね?

とにかく覚えればいいのは、

分配可能額=その他利益剰余金(利益そのもの)+その他資本剰余金(必要性から)-自己株式(すでに配当済みといえる)

です。

難しい会社法の規定などは、まず出ません。

では最後に、今一度、平成23年の分配可能額を計算してみましょう。

分配可能額=その他利益剰余金500百万円+その他資本剰余金0円-自己株式0円=500百万円

ほらね、「なにこの簡単な計算wワロスwww」ってなったでしょ?

ワロスwwwってなったなら、もう忘れません。

おわりに

今日は、司法試験受験生向けの分配可能額の計算を紹介してきました。いかがでしたでしょうか。

分配可能額に限らず、会社法は条文をそのまま読むと訳が分からなくなりやすい科目です。是非、イメージを持って、「要はこういうことか!」と一つずつかみ砕いて理解していきましょう。会社法に限らず、そういう「物事を簡単に考える力」が試験では試されています。

あぁ会社法好きだからもっと色々書きたくなってきてしまいましたw

でも今日はここまで。

ほなまた!

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