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おはうかるー!
いやかなり久しぶりの更新となってしまいました。やはりブログを作る時間はなかなかとれないですね(‘_’)
息子は先日3歳になりました。超絶元気で、常に何かしゃべってますし、公園に行けばひたすら走り回っております。かわいすぎる…
最近は、個人でやっていた「jiji合宿」(毎朝6時に起きれなかったら脱落していくオンライン企画)を、CPAの公式イベントとして開催しています。残り3週間ほど、どれくらいの方が残るか楽しみです。
はじめに
さて今日は、会社法の論文式試験についての記事です。
公認会計士試験の企業法、司法試験予備試験の商法、司法試験の商法では、論文では会社法がメインで出題されますよね。
苦手としている方が多く、足切りなどに怯えてしまいがちな会社法ですが、細かい論点を覚える以上に断然大事なことを今日はお伝えします。
「骨」となる条文
会社法の論文の勉強はどうしても細かい論点暗記になってしまいがちですが、一番大事なのは問題で問われている「骨となる条文を外さないこと」です。
「骨となる条文」という表現はここで初めて使いましたが、「〇〇に対する請求ができるか」という場合の、一番の大元となる条文のことを指します。
例えば、会社による役員に対する任務懈怠責任に基づく損害賠償請求。これは会社法の試験上最重要条文の一つで、423条1項ですよね。
423条1項を問う問題は各種試験で毎年のように出題されますが、任務懈怠の内容は様々です。
任務懈怠の内容に関するやや細かい条文(役会決議を経るべきなのに役会決議を経ていない、株主総会招集通知を送っていないetc.)は問題により異なるのですが、今回お伝えしたいのは、この423条1項のような、まさしく答案の骨となる条文です。
この「骨」となる条文さえ外さなければ、基本的にどの試験も足切りにはなりません(もちろん他がガタガタだとダメですが)。
会社法は1000条以上ありますが、この骨となる条文て何なのか、を一覧にしようというのがこの記事の趣旨です。
答案の大まかな「型」
うっせーはやくその一覧を見せろや、という声が聞こえてきそうですが、まぁ待ってください。条文の一覧以上に重要なことを書きます。
それは、答案の大まかな「型」についてです。
法律論文には、IRAC(問題提起→規範定立→あてはめ→結論)という有名な型がありますが、これは論点を論じるときの型です。
IRACはもちろんとても重要なのですが、論文問題を解く際に知っておきたい大まかな「型」は以下のとおりです。
- 「骨」となる条文の指摘
- 当該条文の「要件すべて」の検討
- 法的効果の発生・結論
それぞれ少し解説しておきます。
①「骨」となる条文の指摘
まずはこの記事のメインとなる項目、答案の「骨」となる条文の指摘を最初にバシッと示します。
例えば以下のような問題。
【問いかけ】
甲会社は取締役Aに対し、いかなる責任を追及することができるか。
【答案の最初】
甲会社は取締役Aに対し、会社法423条1項に基づき損害賠償請求をすることができないか。
こんな感じです。~できないか、という問いかけに対して、シンプルに何条に基づき何を請求するかを明示します。
大筋を外していないことを示し、採点者を安心させるためにも、これがとても大事。
②当該条文の「要件すべて」の検討
続いて、各要件の検討になります。
受験生が忘れがちだけど非常に大事な視点として、「すべての法律要件を満たして初めて法律効果が発生する」ということ。
(問題文で特殊な限定がかかっていない限り)何かの請求をするのであれば、すべての要件を満たすことを示さない、法律効果は発生しません。これを答案に明示します。例えば、423条1項の請求をするためには、以下の要件をすべて検討する必要があります。
- 役員等に会社に対する任務懈怠があること
- 会社に損害が発生していること
- ①と②の間に相当因果関係があること
- 役員等に故意または過失があること(428条1項参照)
これらの要件自体は当然覚えておかなければならないレベルですが、すべての要件を検討するということを忘れている方よくいます。
どうしても論点が多いのは①任務懈怠ですが、②③④も必ず全て検討しましょう。特に問題となっていなくても、各要件に1点ずつ振られているようなイメージを持つといいです。
こういうところで点を拾えているかで、足切りかどうかが分かれることはよくあります。
この各要件の検討の中で、条文文言からは一概にあてはまっているかがわからないところ、ここがいわゆる論点になります。
皆さんが頑張って覚える論点は、ここでやっとでてくるのであって、論文式試験は単なる「論文探しゲーム」ではないことを意識していただきたいと思います。
③法的効果の発生・結論
法律要件を満たしたら、法律効果が発生し、問いに対する回答がでます。ここでは特に、問いかけに忠実に答えることを意識しましょう。
【問いかけ】(再掲)
甲会社は取締役Aに対し、いかなる責任を追及することができるか。
【結論】
甲会社は取締役Aに対し、会社法423条1項に基づき500万円の損害賠償を請求することができる。
以上のような、答案の大きな「型」はほとんどの問題にあてはまりますので、非常に重要な視点です。
「骨」となる最重要条文一覧
答案のおおまかな「型」を理解していただいたうえで、会社法論文式試験の「骨」となる最重要条文をご紹介しましょう。
どのような条文が「骨」となるのか
「骨」となる条文は、概ね以下のような条文です。
- 責任追及系
- 訴訟提起系
- 株主の権利系
- 請求系ではないが、超重要な手続系
いずれも、大きな視点で言うと「会社or株主としてどうしたら戦えるか」という条文になります。
いざ、条文一覧
ではお待たせしました、一覧で紹介しましょう。
9条 | 自己の商号の使用を他人に許諾した会社の責任 |
---|---|
13条 | 表見支配人 |
22条 | 譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任等 |
23条の2 | 詐害事業譲渡に係る譲受会社に対する債務の履行の請求 |
52条 | 出資された財産等の価額が不足する場合の責任 |
52条の2 | 出資の履行を仮装した場合の責任等 |
53条 | 発起人等の損害賠償責任 |
64条 | 払込金の保管証明 |
102条の2 | 払込みを仮装した設立時募集株式の引受人の責任 |
103条 | 発起人の責任等 |
120条 | 株主等の権利の行使に関する利益の供与 |
171条の3 | 全部取得条項付種類株式の取得をやめることの請求 |
179条の7 | 売渡株式等の取得をやめることの請求 |
182条の3 | 株式の併合をやめることの請求 |
210条 | 募集株式の発行等をやめることの請求 |
212条 | 不公正な払込金額で株式を引き受けた者等の責任 |
213条 | 出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任 |
213条の2 | 出資の履行を仮装した募集株式の引受人の責任 |
213条の3 | 出資の履行を仮装した場合の取締役等の責任 |
247条 | 募集新株予約権の発行をやめることの請求 |
285条 | 不公正な払込金額で新株予約権を引き受けた者等の責任 |
286条 | 出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任 |
286条の2 | 新株予約権に係る払込み等を仮装した新株予約権者等の責任 |
286条の3 | 新株予約権に係る払込み等を仮装した場合の取締役等の責任 |
303~305条 | 株主提案権 |
349条 | 株式会社の代表 |
354条 | 表見代表取締役 |
356条 | 競業及び利益相反取引の制限 |
360条 | 株主による取締役の行為の差止め |
362条 | 取締役会の権限等 |
385条 | 監査役による取締役の行為の差止め |
399条の6 | 監査等委員による取締役の行為の差止め |
407条 | 監査委員による執行役等の行為の差止め |
421条 | 表見代表執行役 |
422条 | 株主による執行役の行為の差止め |
423条 | 役員等の株式会社に対する損害賠償責任 |
429条 | 役員等の第三者に対する損害賠償責任 |
433条 | 会計帳簿の閲覧等の請求 |
462条 | 剰余金の配当等に関する責任 |
465条 | 欠損が生じた場合の責任 |
467条 | 事業譲渡等の承認等 |
759条4項 | 株式会社に権利義務を承継させる吸収分割の効力の発生等(詐害的会社分割) |
764条4項 | 株式会社を設立する新設分割の効力の発生等(詐害的新設分割) |
784条の2 | 吸収合併等をやめることの請求(消滅会社) |
796条の2 | 吸収合併等をやめることの請求(存続会社) |
805条の2 | 新設合併等をやめることの請求 |
816条の5 | 株式交付をやめることの請求 |
828条 | 会社の組織に関する行為の無効の訴え |
829条 | 新株発行等の不存在の確認の訴え |
830条 | 株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え |
831条 | 株主総会等の決議の取消しの訴え |
846条の2 | 売渡株式等の取得の無効の訴え |
847条 | 株主による責任追及等の訴え |
847条の2 | 旧株主による責任追及等の訴え |
847条の3 | 最終完全親会社等の株主による特定責任追及の訴え |
854条 | 株式会社の役員の解任の訴え |
908条 | 登記の効力 |
差止請求や不足額填補系など、似ているのも全部あげてみたら57個にもなってしまっていました。
まぁ1000条以上ある条文のうち57個に最重要条文を絞れたので、よしとしましょう。
赤字にしたものは、そのなかでも毎年のように問われるA+条文です。
この一覧表の使い方
この一覧表は、個人的にはよくできています。
なぜなら、この中から最低でも1問は普通は本試験に出題されるためです。
使い方としては、この条文番号を覚えるというよりも、今一度時間を取ってこれらを条文を引きながら読んでおき、試験当日に問題を見たときにピクっとできる状態にするのが良いかなと思います。細かい論点の精緻化をするよりも、よっぽど点数につながると思います。
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